カフェ頼政道

「第59回 カフェ・頼政道」 3月3日

終了しました

「フィオリの会」 朗読の響き

言霊(ことだま)のご馳走をいただきます

平成22年11月28日、私たちは初めてフィオリの朗読を体験しました。お互いの息づかいが感じられる程の近さで、薄明かりと静寂の中、私たちは言霊に心を掴まれ喜怒哀楽さまざまな世界に引き込まれていきました。そして、フィオリが大好きになりました。続く平成23年12月4日には2回目の朗読会。その日、「祝婚歌(吉野弘さん作)」の朗読に涙した人もいました。今回は3回目の招待です。ひと時、心に栄養をいただきます。

フィオリの会の感想とお礼

3月3日はフィオリの会の皆さん(9名)の方に5作品を朗読して頂きました。

1.最初の作品は谷川俊太郎さんの「12月(じゅうにつき)」を皆さんで朗読。
 詩に馴染みがないという方にはとりわけ現代詩は大変むずかしいものです。この詩も皆さんの声を聞いているだけではなかなかイメージを獲得できません。 しかし透明感のある皆さんの音の響きに吸い込まれるように必死で言葉を追いかけました。そのような作業をしていると内省的というのでしょうか、自分の内側にある昔々に仕舞っておいたものの一部が目覚めたようになる感覚になります。少年や処女の時に戻ったような気がします。
 たとえば6月はこんなふうです。
 「ろくがつは ふるい にんぎょう あめの しずくにぬれた 
 がらすのむこうを みつめる ひとみ どこへもいかずに 
 たたずんで だれかを まっている ひとことも くちをきかずに
 いつまでも こどものまま いつまでも ほんのりと ほほをそめて」
       
2.「京の大仏っさん」  梅原 陽子さん 川口繁子さん 山本和子さん
 京の大仏さんと奈良の大仏さんが伊勢参りの途中で蕎麦を食い逃げした話でした。蕎麦屋の主人が捕まえて棒で奈良の大仏さんの頭を叩くと「クワーン、クワーン」と鳴って、主人は「あれだけ食って喰わんとは」と怒ったけれど、今度は京の大仏さんの頭を叩くと「コツコツ」と音が鳴って「コツコツ返すというなら、そう言わんかい」と許してくれましたというお話でした。
 親しみのあるキャラクターが登場し、昔話特有の面白くて愉快なストーリーにのっての朗読は聞いている皆の気持ちを穏やかにさせます。皆は童心に帰った気持ちで楽しめました。

3.「方丈記」
 岩城貞子さんが鴨長明のオリジナルを、服部畝美さんが現代語訳を、お二人が交互に朗読する趣向です。 美しいが、明瞭で、語尾までもしっかりした朗読が現代にも通じる世の無常を私たちの胸にしっかり刻みました。

4.「ボッコちゃん」  伊藤和子さん 竹内友子さん 楠井智子さん
 星 新一の代表作のショートショート集から。
 舞台は近未来の美人のアンドロイドがいるバ-。
 「マスターは残ったお客に声をかけた。 『これから,わたしがおごりますから,みなさん大いに飲んで下さい』 おごりますといっても,プラスチックの管から出した酒を飲ませるお客が,もう来そうもないからだった。 お客も店の子も,乾杯しあった。マスターもカウンターのなかで,グラスを上げてほした。 その夜,バーは遅くまで灯りがついていた。しかし,だれひとりも帰りもしないのに,人声だけは絶えていた」
悲しいような 辛いような結末ですね。

5・「青葉の笛」  あまんきみこ 著から  今里弘美さん
 平氏との戦いで初陣をむかえた源氏の熊谷次郎直実は明日は決戦という夜、平氏の陣から美しい笛の音がきこえてくるのに気付く。そしてその翌日の運命の日、直実はその笛の奏者と運命的な出会いをする。
 一の谷で追い詰め捕えた若武者をあまりに若さの故見逃したいと考えた直実の考えは到底叶うものではなかった。ついにその若武者は斬首されることになる。そのとき直実はその若武者の鎧の下から一本の笛を発見し、初めてその若武者が前夜一の谷の戦場で笛を吹いていた敦盛であったことを知ることになる。 
 この敦盛の最期は平家物語の中でも特に涙を誘う場面として有名な場面です。その話を今里さんは点字本を両手で読み取られ朗読される。
 彼女の声がカフェに響き始めるとカフェは変わる。ざわめきは排除され、均一な空気が穏やかだけれどしっかりと場を満たす。聴衆は動かない。話が始まってただちに佳境に入ったような気がします。この物語の悲しさにはこの進め方がふさわしいのでしょう。臨場感がカフェを包みます。その緊張感を持続しながら物語はあっという間に幕を閉じました。そして みんなで「青葉の笛」を合唱して朗読会は終了です。
 「一の谷の軍(いくさ)破れ
 討たれし平家の公達(きんだち)あわれ
 暁寒き須磨(すま)の嵐に
 聞こえしはこれか 青葉の笛」

フィオリの会の皆様ありがとうございました。

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